NeoAlchemist No.294

最終更新日: 2022-11-18

ルミノール反応

はじめに

 「ルミノール反応」と聞いて皆さんはどんな言葉を連想しますか?「光る」「ドラマ」「鑑識」「血」などでしょうか。ドラマなどで鑑識さんが、血痕がついていそうなところにスプレーで謎の溶液を吹きかけて、「光りました。ルミノール反応陽性です」などというシーンは想像に難くないと思います。では、なぜルミノール反応で血液が検出できるのでしょうか。その原理についてみていきたいと思います。

実験手順

使う薬品

ルミノール10 mg
水酸化ナトリウム100 mg
蒸留水27 mL
過酸化水素水(34.5 w/w%)2 mL
ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム60 mg

使う器具

100 mLビーカー2 個
試験管1 本
3 mLピペット2 本

1. ルミノール10 mgと水酸化カリウム100 mgを蒸留水9 mLに混ぜます。(A液)

2. ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム 60 mgと過酸化水素水2 mLを蒸留水18 mLに混ぜます。(B液)

3. A液とB液を混ぜると青色の蛍光が現れます。この時、B液が黄色なので、B液をA液に混ぜた方が観察しやすいです。また、発光は一瞬ですので、ピペットで一滴ずつ滴下するとわかりやすいでしょう。

 

原理

 ここで、皆さんの多くは「A液にもB液にも血が入ってないじゃないか」とお思いになっていることでしょう。実は反応に本当に必要なのは、血液に含まれている三価の鉄イオンです。それ故、ここではヘキサシアノ鉄(III)酸カリウムが血液の代わりに鉄イオンを出してくれています。この鉄イオンはルミノールと過酸化水素水が反応するのに必要なエネルギーを少なくしてくれます。この様な物質を触媒と言います。

 

 結婚を両家から反対されていたロミオ(ルミノール)とジュリエット(過酸化水素水)も鉄イオンという説得役(触媒)が入れば、幾分結婚(反応)しやすくなります。

 

 そうして、ルミノールは別の物質になります。こうしてできた物質は励起状態にあります。これはエネルギーがたくさんある状態で、不安定な状態でもあります。

 

 人間のテンションと考えるとわかりやすいかもしれません。テンションが高いと活動したくなると思います。バッティングセンターに行ったり、ショッピングしたり、勉強をしたり、人によって色々な活動をすると思いますが、最後には「ふう、疲れた」といってその活動を中止すると思います。

 

 分子もエネルギーがたくさんあるときには同じことをします。ただ、分子はバッティングセンターに行ってバットを振ることはしません。では、何をするのか。分子は光を放出することによってエネルギーを発散します。この光を私たちは反応として観測しているのです。そうして、物質は一番落ち着いた状態(基底状態)になります。

 

 光にはエネルギーがあります。これは少し驚きかもしれません。しかし、光あるところにエネルギーありです。身近な例を考えるとわかりやすいかもしれません。例えばライターをカチカチすると火花が出ます。火打ち石と金属部品がぶつかる衝撃が光を生んでいるのです。また、蛍光灯はどうでしょうか。蛍光灯を光らせるにはスイッチを押さねばなりません。スイッチを押すと電気が流れます。その電気のエネルギーから光が生まれています。今回のルミノール反応は分子の内部に溜まったエネルギー(化学エネルギー)によって光が生まれています。

 

 以上の様にルミノール反応に必要なのは手助け役の鉄イオンでした。それ故ルミノール反応が出たからといって人間の血液が存在するとは限りません。他の動物の赤い血液でも反応しますし、銅イオンでも反応するそうです。(ということはカニなどの青い血でも反応するのでしょう)

 

 それ故、実際は本当に人の血液かどうかを調べる追加の検査を行なわない限り、血液であるとは断言できません。

終わりに

 いかがでしたでしょうか。このルミノール反応の様に化学エネルギーを光に変える例は他にもたくさんあります。例えば蛍光塗料やケミカルライト、蛍やオワンクラゲの光などが挙げられます。この様に光と化学は切っても切り離せない関係にあります。

 

 最近では太陽光発電の重要性が持続可能な社会の形成に向けて叫ばれていますが、太陽光発電で得た電気を電池に貯めたとしたら、これはまさしく光エネルギーを化学エネルギーに変換したということです。この様に化学は環境問題解決の可能性をも秘めています。

 

 この記事を機に、皆さんが化学を面白いと思ってくださることを心から願っております。

参考にさせていただいたサイト

https://labchem-wako.fujifilm.com/jp/category/01336.html

https://optica.cocolog-nifty.com/blog/2012/02/post-52b1.html

実験の様子