ナイロン66の合成
水野颯太
はじめに
この実験では、ナイロン66という物質の合成を行います。ナイロン66は高校の有機化学でも登場する物質なのでなじみ深い方も多いかと思いますが、ここで改めてナイロン66について説明、および合成実験の流れを説明していこうと思います。
ナイロン66について
ナイロン66は、アメリカのデュポン社が発明した世界初の合成繊維です。天然の絹糸に替わる合成繊維を作る目的で開発されました。日本では東洋レーヨン(現東レ)が開発をはじめ、今では本格的に生産されています。
ナイロン繊維は摩擦に強く、また耐薬品性も備えています。また、比較的耐熱性もあります。そのため、衣類に幅広く用いられるほか、歯ブラシ、釣り糸など実に幅広く用いられています。
使用する器具、試薬
器具
100mLビーカー2個、ガラス棒、ピペット、薬さじ、ピンセット、小さめの試験管
試薬
アジピン酸ジクロリド 0.185mL、 ヘキサン 5mL、 ヘキサメチレンジアミン 0.30g、 水酸化ナトリウム 0.12g、 水 5mL、 アセトン 10mL
実験操作
1. ヘキサメチレンジアミンを100mLビーカーに0.30g計りとり、水酸化ナトリウム0.12gを溶解させた蒸留水5mLを加える。(A液)
2. 次に100mLビーカーにアジピン酸ジクロリド0.235g(比重が1.26g/mLなので0.185mL)を計りヘキサン5mLを加える。(B液)
3. A液の入ったビーカーにピペットで器壁に伝わせながらB液をゆっくり注ぐ。このとき境界に生成した白い膜をガラス棒で引き上げて巻き付ける。
4. 片方の溶液がなくなるまで巻いたあとにアセトン10mLで洗い乾燥させる。
実験の反応原理
高校の教科書に掲載されているナイロン66の合成方法は、アジピン酸 (化学式 HOOC-(CH2)4-COOH)とヘキサメチレンジアミン(H2N-(CH2)6-COOH)の縮合重合によって得られる、というものです。アジピン酸のOHとヘキサメチレンジアミンのHから水が生成され、それが取り外されながら結合を繰り返していきます。
ところが、この反応は高温・高圧の環境下でないと進行せず、実験室のレベルで行うには無理があります。そのため、アジピン酸のかわりに、より反応性の高いアジピン酸ジクロリド(化学式 ClOOC-(CH2)4-COOCl)が用いられます。また、これを用いた場合、重合反応の際に塩化水素HClが生じてしまい、ヘキサメチレンジアミンと反応するなどして反応を妨げてしまいます。そのため、発生した塩化水素を中和するために水酸化ナトリウムNaOHが加えられるのです。
以上のことを踏まえ、この実験で行われるナイロン66の合成方法を化学反応式で表すと、以下の通りになります。
参考文献
https://www.kda1969.com/materials/pla_mate_pa66.htm
https://www.boken.or.jp/knowledge/fiber/post_8/
https://www/toishi.info/sozai/textfile/nylon.html
http://chem.kindai.ac.jp/kaken/study/08stdata/08st01.html
https://www/jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/64/12/64_608/_pdf
実験の様子
試験管にぐるぐる巻きついている繊維がナイロン66です