NeoAlchemist No.293

最終更新日: 2021-11-21

白と藍色の駒場祭
化学部の部誌を読むための光速高校化学 ~第一章~

藍色の聖騎士(インディゴ・ホーリーナイト)

城南 かがな
東京大学教養学部化学部に所属する14歳の中学2年生。たくととは幼なじみ。

藍上 たくと
東京大学教養学部化学部に所属する14歳の中学2年生。かがなとは幼なじみ。

ミスリー・ラヴァケット
東京大学教養学部化学部に所属する15歳の高校1年生。なんかすごい賞とかを色々とっている。

(画像出典:Waifu Labs https://waifulabs.com/

 

かがな
「ネタがないよ~~~~~~~!!!!」

たくと
「うわっ、急にどうしたんだ、かがな」

かがな
「どうしたんだ、とか言ってる場合じゃないよ!たくと!
今日は11月20日。明日は駒場祭本番なんだよ!?
なのに全然部誌の原稿はできないし、それどころか何を書こうかすらぜ~んぜん決まってないし……うぅ……」

たくと
「まったくいつも仕方ないな、かがなは。
昨日までのんきにソシャゲで馬とか走らせてたと思ったらこれか」

かがな
「むぅ……
そう言うたくとは、もう部誌の原稿できちゃったの?」

たくと
「ああ、当然だ。
書くことがなんにも思いつかなかったから、 当日は東大総長の福笑いを部誌に貼ってごまかすことにした」

かがな
「ことにした、じゃないよ!!全然ごまかせないよ!!
っていうか、もうみんな原稿できてて、あとは私たちだけなんだよ!?」

たくと
「うっ…… もうみんな終わっちゃったのか……」

かがな
「そ、そうだ!みんなの原稿を一回読んでみて、これから書くテーマの参考にしようよ!
ねっ、たくと!」

たくと
「そ、そうだな、わかった」

~~数分後~~

かがな
「…………………………」

たくと
「…………………………………………」

かがな
「…………わかった?」

たくと
「…………全然わかんない……………………」

かがな
「そうだよね…… 大学生のみんなが書いた式とか説明だから、 中学生の私たちにはちょっと難しいよね……」

たくと
「ほんとほんと。ここの文に出てくる『みずもと』なんて、 僕たちはまだ習ってなくてさっぱりわかんないもんな……」

かがな
「いや水素は習ったよ……」

たくと
「そうだ、こういうときはミスリーさんに聞いてみないか?
あの人ならきっと、『酸化』とか『還元』とか『励起』とか、 この辺のよく分からない用語に詳しいはずだ!」

かがな
「そうだね!
あっ、いいところに! お~い!ミスリーさ~~ん!!」

ミスリー
「ホワアアアアアアアアアァァァァァーーーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!!!!!!!!!!!」

かがな
「あ、ミスリーさん。ヨガの最中にすみません。
この部誌に書いてあることがよく分からないんですけど、 どんな知識が仮定されているのか教えていただけますか?」

ミスリー
「あら、お安いご用よ。貸してごらんなさい。」

たくと
「ヨガで出る声じゃないだろ」

ミスリー
「そうね……
まずみんなは、『原子』という言葉を知っているかしら?」

かがな
「はい!
私たちを極限までバラバラにすると出てくる粒みたいなやつですよね!」

たくと
「なんか表現が怖い」

ミスリー
「そうね。地球上のほとんどあらゆる物質を形作る極小の粒のようなもの。 地球を構成しているのはおよそ90種類の原子で、 その原子の各種を元素と呼んでいるわ」

たくと
「じゃあ、例えばそこに落ちている鉛筆の芯も、 今ミスリーさんが両手に抱えている塩の塊も、 そこに置いてある僕のズボンも、全部元素でできているんですか?」

ミスリー
「そうよ。 その鉛筆の芯は黒鉛といって、炭素という元素の原子が大量に結合して層状に重なってできているし、 この食塩は塩素とナトリウムという2種類の元素が等しい割合で結合してできているし、 ズボンを履かない変態は警察に通報するわ」

かがな
「落ち着いてください!あれは体操着です!
今通報されたら原稿が仕上がらなくなっちゃいます!!」

ミスリー
「……元素に関しては、化学にあまり馴染みがなくても、 この図を見たことがある人は多いかもしれないわね。
ここに記されているのは現在この世に存在するすべての元素、 いわば世界の構成表よ」

図1:メンデレーエフの元素周期表(出典:Wikipedia「周期表」)

かがな
「……これって、何の順番に並んでるんですか?」

ミスリー
「そうね、じゃあ原子をもっと細かく見てみましょうか。
そうすると、中心にある原子核と、その周囲を回る電子に分けられるわ。」

図2:ボーアモデルによる原子模型(出典:http://www.sci.osaka-cu.ac.jp/phys/nuclear_physics/about2.html

ミスリー
「原子核は正の電荷をもっているわ。
これは、原子核は陽子と中性子という2種類のさらに細かい粒子で構成されていて、そのうち陽子が正の電荷をもっているためね」

かがな
「電子は原子核の周りを回っているのに、 原子核は中心からずっと動かないということは、 原子核は電子に比べてかなり重いんでしょうか?」

ミスリー
「そうよ。陽子や中性子の質量は、電子の約1800倍もあるわ。
でも、1つの陽子が持つ正電荷の大きさは、 1つの電子が持つ負電荷の大きさと全く同じであることが知られているわ」

たくと
「そうすると、1つの原子全体での電荷の大きさは 陽子の数と電子の数の差になりますね」

ミスリー
「そうね。そしてそれは必ず0、 つまり正にも負にも帯電していない状態になるわ。 1つの原子に含まれる陽子と電子の数は必ず同じなの。
上の元素周期表は、幾種類もの元素を、1つの原子に含まれる陽子の数が小さい順に、 左上から並べたものになっているわ」

かがな
「そうだったんですね~! ※以上の議論は高校化学で取り扱うボーア模型に基づいており、現在の量子化学で一般的に用いられる電子の波動性を考慮した原子の姿とは異なっています。 が、酸化還元反応の基本的な理解におけるモデル化としては問題なく有用なので、以後も引き続きボーアモデルを使います。

たくと
「うわっ!?どうしたんだ、かがな! 急に太字でしゃべりだして!」

かがな
「なんか、そこに置いてあった紙を読んだら 勝手に声が変わっちゃった……」

ミスリー
「気にしなくていいわ。 今度は電子をもっと詳しく見てみるわよ!」

第二章へ続く……